「去年のスカイツリーの灯りに、時間の重なりを見た」
去年の冬、仕事帰りに立ち寄ったスカイツリーの下で撮った一枚の写真。その夜のことを、今でもよく覚えています。風が冷たくて、ポケットに手を入れても指先が痛い。それでも、光の粒が空に溶けていくのをしばらく眺めていました。
【撮影場所:スカイツリー】
古書組合で働いていると、「時間」というものを意識する瞬間が多くあります。本の紙がゆっくりと色を変え、
人の手から手へと渡っていく。それはまるで、灯りが次々と点いていくようなもの。どこかで誰かが読んでいた言葉が、いまもどこかで静かに光っている。
イルミネーションの灯りを見ながら、そんなことを考えていました。きれいだと感じると同時に、一つひとつの光の奥に“記憶”のような温度を感じる。本も光も、時間を越えて誰かの手の中に残る存在だと思います。
写真の中のスカイツリーは、去年と同じように輝いている。でも、自分の心の中で見えるその光は少し違っていて、一年分の経験や出会いが重なった分だけ、あの夜よりも穏やかに見えます。
古書を査定していると、「過去」と「今」が一冊の中で共存していることを感じます。去年の灯りも、あの時の自分も、きっと今この瞬間のどこかに生きている。そんなことを思いながら、今年もまた、静かに冬の光を待っています。











