「あの光のページをめくると、少しだけ去年の気持ちが戻ってくる」
本を読むとき、たまに“そのときの自分”がページの間に挟まっているような気がする。去年の写真を見返すと、それと同じような感覚になる。スマホのアルバムを開いたら、よみうりランドのイルミネーションの写真が出てきた。青と金の光が、冬の空気の中で少し滲んでいる。あの夜はすごく寒かったのに、彼と並んで歩いた時間だけは、やけにあたたかかった。
【撮影場所:よみうりランド】
「ここ、光が本のページみたいだね」彼がそう言って、私が笑ったのを思い出す。その一言が妙に嬉しくて、
帰りの電車の中でずっとその言葉を頭の中で繰り返していた。
本の仕事をしていると、“言葉が心に残る瞬間”に敏感になる。誰かの部屋から出てきた古い本を手に取ると、ページの隅に線が引いてあったり、付箋が残っていたりする。その小さな跡に、その人が何を感じていたのかが透けて見える気がする。灯りも、同じだと思う。誰かと見た光には、その人との時間が確かに残っている。
写真の中のイルミネーションは、もう去年のものなのに、今見ても新しい物語みたいに感じる。たぶん、光は“過去”を明るく見せる力があるのだと思う。だから私はイルミネーションが好き。まるで読後の余韻のように、静かで、でも確かに心を照らしてくれるから。
彼とはもう会っていないけれど、この写真だけは消さずに残している。本棚に置いたお気に入りの小説みたいに、
いつかまた読み返したくなる日が来るかもしれないから。











