「スカイツリーの灯りは、まるで物語の最初のページみたいだった」
今日は査定の仕事が早く終わったので、帰りにスカイツリーの近くまで足を延ばしてみた。空気が澄んでいて、
光がひときわくっきりと夜空に映えていた。見上げた瞬間、思わず息をのむ。まるで“物語の最初のページ”が開くみたいに、光が静かに広がっていった。
【撮影場所:スカイツリー】
ライトアップの色が少しずつ変わるたびに、心の中のページもめくられていくような気がした。本が好きで、日々たくさんの本を査定しているけれど、どんな本も最初の1ページを開く瞬間がいちばん好きだ。そこにはまだ何も知らない希望があって、これから始まる物語の温度が詰まっている。
スカイツリーの光を見ながら、「灯りにも物語がある」と思った。たとえば今日、誰かが恋人とこの光を見上げていて、また誰かがひとりで過ぎた日を思い出しているかもしれない。同じ光なのに、見る人の心でまったく違う章が生まれる。本もそう。読む人の数だけ物語が生まれる。
出張買取の仕事では、お客様が手放す本をひと箱ずつ開けるたびに、その人の人生の“書きかけのページ”に出会う気がする。ページの角の折れ方、メモ書き、日焼けの跡――どれも生きた証のようで。それを受け取りながら、
「次の読者へ、ちゃんと届きますように」と心の中で祈っている。
光の下でスマホを構えて、写真を一枚だけ撮った。画面の中のスカイツリーは、さっきよりも少し柔らかく見えた。もしかしたら、自分の心のページも、少しめくれたのかもしれない。
冬が始まるこの季節、本と光の両方に包まれる瞬間は、なぜこんなにも静かであたたかいのだろう。帰り道、風が頬を冷たく撫でたけれど、その冷たささえも“読後の余韻”みたいに感じた。











