祝日の夜。
仕事を早めに切り上げて、駅までの道を歩いていた。
街はもう冬の気配をまとい始めていて、
コンビニの前を吹き抜ける風が、少し冷たかった。
電車を待ちながら、なんとなくスマホの写真フォルダを開く。
スクロールしているうちに、
去年のクリスマスの写真が出てきた。
新宿のイルミネーション。
人が多くて、寒くて、それでも賑やかで。
あの夜、一緒にいた人の笑い声まで思い出した。
【撮影場所:新宿】
写真の中の光は、今も変わらない。
でも、隣にいた人はいない。
別れてからしばらく経つのに、
イルミネーションの写真だけは消せないままだ。
もう思い出にしていい頃なんだろうけど、
どうしても指が動かない。
この仕事をしていると、
誰かが長く持っていた本を手放す瞬間に立ち会うことがある。
手放す理由は人それぞれだけど、
どの人も少しだけ名残惜しそうに笑う。
きっと、あの感じに似ているんだと思う。
消したくないけど、いつか整理しなきゃいけない写真。
それも、ひとつの区切りなのかもしれない。
スマホの画面を閉じて、
改札の光を見たとき、
去年の新宿の灯りと少し重なった。
誰もがそれぞれの時間を過ごしている。
今年も、また同じ街に光がともるだろう。
そのとき、自分はどんな気持ちで見上げるのだろう。
電車の窓に映る自分の顔が、
少し疲れて見えた。
でも、スマホの中の光は、
ちゃんとあの頃のままだった。











