時計の針が20時を少し過ぎたころ。
事務所の灯りはすでに半分が消え、
静かな空気の中でパソコンのモニターだけが小さく光っています。
今日も長い一日でした。
本の査定データを整理している途中、
ふと、デスクトップのフォルダにある「去年の冬」という名前が目に入りました。
開いてみると、
去年の二子玉川で撮ったイルミネーションの写真がありました。
夜の川沿い、風に揺れる木々の光。
たくさんの人が通り過ぎる中で、
ほんの数分だけ立ち止まって撮った一枚です。
【撮影場所:二子玉川】
その夜もたしか残業帰りで、
ハイエースの中には引き取った本がぎっしり詰まっていました。
手は冷たく、肩は重く、
でも目の前の光を見た瞬間、
なぜか呼吸がすっと楽になったのを覚えています。
今年もまた、その季節が近づいています。
昼間は忙しさに追われ、
書籍に囲まれて過ぎていく毎日だけれど、
夜になると、こうして光の記憶がふとよみがえる。
それだけで少し救われる気がします。
灯りって、人の心の奥に残るものですね。
本も同じだと思います。
手に取った瞬間、
その人の記憶や時間が少しだけこちらに移ってくる。
出張買取でお預かりする本の中にも、
そんな“見えない灯り”がたくさん詰まっている気がします。
写真の中の光は、もう去年のもの。
けれど不思議と古びて見えないのは、
きっとあの時の気持ちがまだ自分の中に残っているから。
光を見つめながら、
「また今年も頑張ろう」と心の中でつぶやきました。
モニターの明かりを落とし、
買取させて頂いた書籍を静かに片づける。
外はもう真っ暗で、
見える街の灯りが
去年の写真と重なって見えました。
仕事の夜も、悪くない。











