去年の冬、出張買取の帰りに撮った一枚の写真がある。
その日、空気が澄んでいて、
街全体が少し浮かび上がるように光っていた。
寒さよりも静けさの方が強く残っていて、
その光景をなんとなく撮っただけだった。
今夜、その写真をパソコンの画面で見返していたら、
あのときの風の音や、
荷台の中で本がわずかに揺れる感覚まで思い出した。
たった一枚の写真なのに、
時間をまるごと閉じ込めている気がして、不思議だ。
【撮影場所:表参道】
去年のイルミネーションは派手ではなかった。
でも、光が通りをゆっくり流れていくようで、
眺めていると落ち着いた。
通りすがりの人が写真を撮っているのを見て、
「この光を覚えておこう」と思ってカメラを構えた。
その一瞬が、なぜかずっと心に残っている。
今年もまた同じ場所に灯りが点くのだろうか。
仕事の合間に見に行けたらいいなと思う。
出張買取の帰り道は、
時間に追われることも多いけれど、
それでも夜の街の光を見ると、
「今日もちゃんと一日が終わった」と感じる。
本もそうだ。
誰かの時間を閉じ込めたまま、
長いあいだ静かに棚の中で光っている。
誰かが手に取ると、
また新しい灯りになる。
それって、どこかイルミネーションと似ている。
去年の写真を見ているうちに、
またあの光の下に立ちたくなった。
夜風の冷たさも、街のざわめきも、
全部まとめて冬の記憶だと思う。
そろそろ、今年の光が街を飾り始める。
また一枚、心に残る写真が撮れたらいい。
 











